第57章

帰りの車中、先に口火を切ったのは空見灯だった。

「明日、弁護士に協議書を作ってもらうわ。株はあなたに譲渡する。言った通り、私はいらないから」

有言実行。先に言っておかないと、また桐谷憂に誤解されかねない。

彼女が欲しいのはあくまでプロジェクトの成功報酬であり、桐谷家の資産になど興味はないのだ。それに、彼に泥棒猫のような目で見られながら過ごすのも御免だった。

桐谷大正の病状は把握している。あと数ヶ月は寿命を延ばせる自信があった。つまり、それまでは桐谷憂と顔を合わせることになる。

毎回ピリピリした空気で過ごすのだけは避けたかった。

桐谷憂がハンドルを握ったまま、ちらりと彼女を一瞥する...

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