第58章

神崎椿は、桐谷憂からの忠告など歯牙にもかけていなかった。彼女の頭の中にあるのは、いかにして桐谷光希の力になれるか、ただそれだけだった。

翌朝早く、神崎椿は手土産を携えて空見家を訪れた。

神崎椿の姿を目にした瞬間、空見睦月は呆然と立ち尽くした。「神崎さん? まさか、神崎椿さんですか? どうしてうちへ?」

興奮のあまり、彼の手は上ずっていた。「父さん、母さん! 大スターだよ、大スターがうちに来たんだ!」

神崎椿はサングラスを外すと、愛想よく微笑んで家の中へと足を踏み入れた。

「おじ様、おば様。私、空見灯の同級生なんです。昨日彼女を見かけて、今日はご挨拶に伺いました。ご迷惑でなければいい...

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