第五十九章

空見灯と鏡京介は、観念したように個室へと足を踏み入れた。室内には、息が詰まるような気まずさが充満している。

神崎曉人は相変わらず能面のような無表情を崩さなかったが、視線がバースデーケーキに止まると、ようやく口を開いた。

「このケーキは?」

「鏡京介の手作りです。どうしても大先輩である神崎さんの誕生日をきちんとお祝いしたいと言うもので」

空見灯はすかさず鏡京介の肩を叩いた。

「神崎さんにプレゼントも用意してあるんでしょ?」

「あ、いや……その、不躾では……」

鏡京介は決まり悪そうに口ごもった。

実のところ、彼はプレゼントなど用意していなかった。この贈り物は、空見灯が選んだものだ...

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