第六十一章

二人が十六階に到着すると、エレベーターホールではすでにホテルの支配人が待ち構えていた。

「桐谷社長、いかがなさいましょうか」

「1609号室のカードキーをよこせ。このフロアは封鎖だ。監視カメラの映像はコピーした後、完全に消去しろ」

桐谷憂が手を差し出すと、相手は慌ててカードキーを手渡した。

「こちらが1609号室、それと1610号室のキーでございます」

ホテルの支配人たるもの、修羅場など見慣れている。

桐谷憂は電話で多くを語らなかったが、支配人はすでに監視カメラを確認し、事態を概ね察していたのだ。

桐谷憂はカードキーを受け取ると、わずかに顎を引いて頷いた。

関係者が立ち去るの...

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