第6章

渡辺星奈の誕生日。私はわざと早起きして、慎太郎のために豪華な朝食を用意した。目玉焼き、ベーコン、トースト、そして彼が一番好きなブラックコーヒー。

「すごい朝食だな」

慎太郎は少し驚いている。

「お前が手ずから作った朝食なんて、久しぶりだ」

「最近仕事が忙しくて、あなたをないがしろにしちゃってたから」

私は優しく微笑む。

「今夜はフレンチでも食べに行きましょう。そのお詫びに」

慎太郎は虚を突かれたようだった。最近ずっと冷たかった私が、どうして今日に限って急に……。

「どうしたの? 嫌だった?」

私は甘えるように訊ねる。

「もう予約しちゃったんだから。銀座に新しくで...

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