第6章

温水始子は窓際に立ち、窓外に広がる街の灯りを眺めていた。

温水宮子が去ってから、彼女はついに堂々と東野十川のマンションに住むことができるようになった。そう思うと、得意げな笑みが彼女の顔に浮かぶ。

「宮子、やっといなくなったのね」

彼女は低い声で呟き、その瞳は勝利の輝きを放っていた。

「これで十川は、私だけのものよ」

彼女は胸元にあるピルケースをそっと撫でた。それは彼女が肌身離さず持ち歩いている「道具」。確かに彼女は先天性の心臓病を患ってはいるが、病状は彼女が装っているほど深刻ではなかった。長年、彼女はこの「弱点」を利用して家族や友人から同情と特権を手に入れ、そして温水宮子を...

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