第25章:家の味

月野里奈がそう思うのも無理はない。以前一緒にいたとき、料理はいつも月島里奈の担当だったからだ。

どんな時間でも、上田景川が「お腹が空いた」と言えば、たとえ夜中の2時でも月島里奈は起きて料理を作ってくれた。

一方、上田景川は「君子は庖厨を遠ざく」という言葉を極限まで実践しており、キッチンのドアすら開けたことがなかった。

一度、勇気を出して上田景川に手伝ってもらおうとしたことがある。確か、ジャガイモの皮を剥くような簡単なことだった。そのとき、上田景川はどうしたのか?

彼は冷たい顔をして、目も合わせずにただ一言、「邪魔しないで」と言っただけだった。

それなのに、今日は一体どうしたというの...

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