第43章

「パパは夕食の時は何ともなかったのに」

中央病院のロビーに立ち、咲良は月野里奈の手を引きながら、心配そうな表情で遠くを見つめていた。「どうして急にお腹が痛くなったんだろう」

月野里奈はさらりと口を開いた。「後で何か飲んだり食べたりしたのかもしれないわね」

彼女は病院の入口を見つめ、眉をひそめた。

上田景川がどうして胃病なんて?

彼の胃腸は、もともと丈夫なはずだった。あれだけ接待が続いても、胃の不調を訴えることなど一度もなかったのに。

たった六年で、胃がこんなに弱くなるなんて?

月島優奈は一体どんな風に彼の面倒を見ていたというの?

そう考えていると、黒いマセラティが病院の入口に...

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