第5章:6年後の再会

月野里奈は娘の咲良の潤んだ瞳を見つめ、心が溶けそうになった。

どうして自分の宝を責めることができるだろうか?

咲良は鼻をすすりながら、彼女の袖を引っ張り、小さな声で言った。「拓也兄さんが、咲良はママを手伝えるって言ったから、咲良は来たの」

「ママ、咲良は間違えたの?」

月野里奈は幼い娘を抱きしめずにはいられなかった。彼女の小さな天使。「いいえ、咲良は間違っていないわ」

「でも、これからはお利口にして、ママの一番のプリンセスになってくれる?」

咲良はすぐにうなずいた。「うん!」

「そうだ、他の人の前ではママって呼んじゃダメよ、わかった?」

「はい!」

咲良は再び月野里奈の頬に顔を寄せ、優しく擦り寄せた。「咲良はこれからもずっとママの言うことを聞くよ。何でもママに話すし、絶対にママを悲しませない!」

母娘はお互いに寄り添い、その親愛の情を感じ合っていた。その一方で、青湾別荘の門の外では、普段は定時に帰宅する上田景川が車から降り、複雑な心境で中へと歩いていた。

会社の仕事はまだ片付いていなかったが、白石健から電話で、お姫様が満足するメイドを選んだと聞いたとき、彼の心には奇妙な不安が生じた。

なぜこんな感情が湧くのだろう?

咲良がメイドが主人のいない間に子供をいじめると言っていたから、こんなに心配しているのだろうか?

上田景川は自分でも確信が持てなかった。この娘が現れてから、自分はまるで何かが狂ったように、あり得ないことを心配している。

彼はこの異常な感情を、月島里奈の娘だからだと結論づけようとした。月島里奈は彼の死んだはずの妻だった。

大切な宝物はいつも心にかかるし、彼女が人を見誤って傷つくのが怖い。

ホールに入ると、彼の目は一瞬で娘の小さな姿を探したが、見当たらなかった。上田景川は少し不機嫌になった。「お嬢様はどこだ?」

そばにいた使用人はすぐに頭を下げた。「お姫様は選んだメイドと一緒に部屋にいます」

上田景川はうなずき、すぐに階段を上がっていった。

彼はどんなメイドが娘を満足させるのか見てみたかった。もし不安を感じるようなメイドなら、咲良のために別のメイドを探すことも厭わなかった。

目的地に着くと、ドアは閉まっていた。上田景川は中で何をしているのか聞き取れず、ドアをノックした。「咲良」

「パパだよ。パパを入れてくれる?」

彼は咲良の今日の行動を思い出し、彼女がよく世話されていることを感じ取った。だから、彼は直接ドアを開けることはしなかった。

部屋の中では、母娘が一緒にアニメを見ていた。二人は顔を上げ、すぐに目を合わせた。

月野里奈がうなずくと、咲良は深呼吸をして、「はい、パパ、入っていいよ!」

ドアが開かれ、男性がゆっくりと入ってきた。彼は咲良を優しく抱きしめた。小さな子供の重さは紙のように軽く、抱いても実感がなかった。彼は眉をひそめ、床に座り込んだ。

咲良はその温かい抱擁に寄り添いながら、ぼんやりと考えた。これがパパなの?

温かくて広い肩、頼りにすると安心感がある。もし兄さんたちもここにいたら……

彼女は軽く擦り寄せた。「パパ、アニメを見てるの!」

上田景川は淡々と応じ、隣の女性に目を向けた。その瞬間、彼の瞳は深くなった。

この角度、この輪郭、この髪をかき上げる仕草、すべてが月島里奈とそっくりだ!

まさか……

「君、顔を上げて」上田景川は突然言った。鋭い目が隣の月野里奈を見据えた。

月野里奈は片側の手を白くなるまで握りしめ、息を吸い込み、疑問の表情を装って顔を上げた。「何かご用ですか?」

しかし、その一瞬で月野里奈は息が詰まりそうになった。

目の前の男性は、時の流れに特別に愛されているかのように、六年前とほとんど変わらない。ただ、より冷酷で、男らしさが増していた。

彼がその冷たい目で自分を見つめると、まるで六年前に戻ったかのようだった。自分がまだ彼を深く愛していた頃に。

でも……もう六年前ではない。

月野里奈は男性の目に自分の姿を見た。この顔は、事故と海に落ちた後の重度の感染で再構築されたもの。

美しく華やかだが、過去とは全く違う。

手術を終えたばかりの彼女でさえ、この顔の下にいるのが月島里奈だと確信できなかった。ましてや、彼女を愛していなかった上田景川がどうしてわかるだろうか?

やはり、上田景川は眉をひそめただけだった。「娘が自分で使用人を見つけたと聞いたが、君のことか?」

月野里奈は毅然と頷いた。「はい、そうです」

「……」

上田景川は眉間をつまみ、なぜかため息をつきたくなった。

違う、全く違う。

彼女の顔でもないし、声でもない。性格も違う!

月島里奈は優しく従順で、自分を見る目は愛情に満ちていた。こんなに冷たい目で自分を見ることはなかったし、こんな風に話すこともなかった。

咲良は左右を見回し、最後に真剣な顔で上田景川に言った。「パパ、おばさんはとてもいい人だから、これから仲良くしてね。いじめちゃダメだよ!」

上田景川は腕の中の娘を見下ろし、眉を軽く上げた。

彼の娘がこんなに早く他人のために話すようになるとは、この女性はただ者ではないようだ。

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