第50章

「まだその時じゃない」

上田景川は軽くため息をついた。「咲良は今彼女なしでは過ごせない。家政婦を替えることは、ゆっくり進めないと」

白石健は上田景川の顔を見つめながら、眉間にしわを寄せた。

月野里奈から離れられないのは、咲良お嬢様だけでなく、社長ご自身もなのでは……

奥様が亡くなってから、社長のそばに女性がいなくなって六年も経つ。

もし奥様がまだ生きているという事実がなければ、月野里奈は悪くない選択だと本当に思うだろう。

少なくとも、お嬢様は彼女を好いているし、社長も彼女を嫌ってはいない。

しかし今は……

白石健は深く息を吸い込み、結局我慢できずに口を開いた。「社長、お忘れで...

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