第52章

小林まきとの電話を切った月野里奈はまたベッドに寄りかかって少し休んでいると、いつの間にか眠りに落ちていた。

彼女は夢を見た。

夢の中は彼女が初めて上田景川と会った情景だった。

それは春の午後、陽の光が暖かく包み込むような日だった。

彼女は桜の木の下で画板を抱えてスケッチをしていた。一陣の桜が舞い散った後、彼女はその白い服を着た少年の姿を目にした。

彼の表情は深く、立体的な顔立ちで、白い服が彼の冷たさと気品を際立たせていた。

彼は遠くの木の下で本を読んでいて、時に眉をひそめ、時に表情を緩めていた。

月野里奈は思わず、彼を自分の絵の中に描き込んでいた。

「上手く描けているね」

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