第55章

煙が立ち上がってきた。

部屋には炎と、息が詰まるような異臭が充満していた。

室内は燃えやすいものばかりで、何十キロもの図面まであった。

火の回りは早かった。

月野里奈は誰が彼女たちを殺そうとしているのか考える時間はなかったが、ただ一つ分かっていた。生き延びなければならない!

少なくとも、咲良だけでも生き延びさせなければ!

彼女は濡らしたバスタオルで咲良の体全体を包み込んだ。

部屋で見つけた縄を咲良の体に結びつけながら「海外にいた時、小林おじさんが教えてくれた生存術、覚えてる?」

「覚えてる」

咲良は涙目で彼女にしがみついた「でもママ…ママが行かないなら、咲良、一人で逃げるく...

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