第56章

月野里奈は再び集中治療室へと戻された。

集中治療室には医師たちが取り囲んでいた。

病院着を着た上田景川は弱々しくベッドの頭に寄りかかっていたが、その目には怒りの光が宿っていた。

「彼女を連れ戻せ!」

彼の声は弱々しいものの、その語調は力強く、強烈な威圧感を放ち、周囲の者たちは息をのんだ。

月野里奈はそっと車椅子から降り、看護師に支えられながら人だかりを掻き分けて進んだ。「上田さん、お呼びですか?」

女の声に、上田景川は眉をきつく寄せた。

彼が振り向くと、冷たい視線が剣のように彼女に突き刺さった。「さっきの言葉、君が言ったのか?」

「はい」

「どういう意味だ?」

上田景川の...

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