第59章

月野里奈は仕方なく白石健に続いて病室に入った。

ベッドに寄りかかった上田景川は、優雅な動きで書類を脇に置き、淡々と眉を上げて月野里奈に一瞥をくれた。「外で十二分も私を見ていたな」

月野里奈は軽く唇を弧を描くように笑った。「上田さんがあまりにも格好良くて、気づいたら見入ってしまいました」

彼女の褒め言葉に、上田景川は肯定も否定もしなかった。

彼の骨ばった大きな手が、まだ湯気を立てている湯飲みをそっと持ち上げ、軽く一口すすった。「そこまで格好いいなら、こんな時間に病室から飛び出して覗き見するほどか?」

言い終わると、彼は月野里奈に視線を向けた。「飲むか?」

彼の薄い唇にはまだ水滴が僅...

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