第60章

拓也は真剣な眼差しで上田景川を見つめた。「では上田さん、私を失望させないでください」

そう言うと、拓也はスマホを取り出し、クラウドに保存していた証拠をすべて削除した。

彼は賭けていた。

上田景川が咲良のため、ママのために、月島優奈を処理してくれることに。

あの日、上田景川のパソコンで見たものが、ずっと拓也の心に引っかかっていた。

おそらく、今回の件で彼は確かめられるだろう。上田景川が本当にママに対して情が深いのか、それとも自己欺瞞と自己陶酔に過ぎないのかを。

彼がバックアップを削除するのを見て、上田景川は軽く口元を緩めた。「そこまで私を信用するのか?」

拓也は顔を上げ、狡猾な目...

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