第76章

野村さんが佐藤愛を連れて入社手続きのためにオフィスを去ると、ようやく彩音姉が葉原遥子のそばに寄り、尋ねてきた。「新しく来たインターンの子と知り合い?」

葉原遥子は唇を引き結び、首を横に振った。「学校で何度か見かけただけ。親しくはないわ」

彩音姉は眉をひそめた。「用心した方がいいわよ。私、人を見る目は結構確かなんだけど、さっきのあの子、あなたのことを見る目がどうもおかしいもの」

「気をつけます。ありがとう、彩音姉」葉原遥子はかすかに微笑んだ。

一時間後、葉原遥子はジュエリーのプロモーションビデオ撮影に呼ばれた。

撮影スタジオでは、セットの中央に一輪の月が吊るされている。その光は半透明...

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