第79章

「あなたを挑発してるのよ」安藤羽風は佐藤愛をちらりと一瞥すると、葉原遥子に向かって微笑みながら言った。

葉原遥子は二人には目もくれず、肩をすくめて「どうでもいいわ。行きましょう」

安藤羽風は眉を上げ、笑みを一層深くした。彼は腕をわずかに上げ、葉原遥子に近づけると、肘を完璧な弧に曲げ、彼女にウィンクしてみせた。

葉原遥子は意図を察し、ぐずぐずすることなく、ごく自然に安藤羽風の腕を取った。

遠くない場所にいた氷川晨は、二人の艶めかしいやり取りを目の当たりにし、唇を一直線に引き結んだ。その視線は、葉原遥子を固く追いかけている。彼は佐藤愛の言葉を聞けば、葉原遥子が少しは嫉妬の素振りを見せるだ...

ログインして続きを読む