番外編1

後悔している。心の底から、後悔している。

古道の先を行く、乙川純のすらりとした背中を見つめながら、私は密かに溜め息をついた。誰のせいでもない。北海道での生配信で彼にさんざん助けてもらった恩義にほだされ、うっかり今回の熊野古道トレッキングに付き合うと頷いてしまった、自分のせいだ。

「奏、ここは足元に気をつけて」

乙川が不意に振り返り、私に向かってすっと手を差し伸べた。

目の前の苔むした石段は、確かに少し湿って滑りやすくなっていた。だが、北海道の原生林で命がけの単独サバイバルを経験した私にとって、この程度の障害など、あってないようなものだ。しかし、断ろうとした瞬間、乙川はもう、ご...

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