第5章

乙川純は、私の話を静かに聞き終えると、その瞳に今まで見たことのないような、凍てつくような光を宿した。

彼は有無を言わさず、地面に転がっていた木村青の襟首を鷲掴みにし、洞窟の外へと引きずり始めた。

「……何をするんですか」

私は後を追いながら尋ねた。

「罠の餌が切れた。こいつで代用する」

乙川の声は、この島の冬の海風よりも冷え切っていた。

私は慌てて彼の腕に掴みかかった。

「待ってください! ここはまだ、法治国家です」

そして、恐怖に顔を引きつらせる木村に向き直り、冷たく言い放つ。

「法律は、あんたみたいなクズを決して見逃さない。日本の警察が、あんたに相応しい罰を...

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