第9章

無人島から東京へ戻る船の上は、島を襲った嵐よりも、遥かに重苦しい空気に満ちていた。

私は窓際に腰を下ろし、乙川と田中が、まるで屈強なボディーガードのように、その両脇を固めている。

船内での昼食が配られると、早速、木村青が甲高い声で文句を垂れ始めた。

「なんだ、このゴミみてえな飯は! まずくて食えたもんじゃねえぞ! 責任者呼んでクレーム入れてやる!」

スタッフの女性は完璧な営業スマイルを浮かべながらも、その瞳の奥には、侮蔑ともとれる冷ややかな光が宿っていた。

「木村様、どうかご冷静に。目的地に到着なされば、もっと美味しいものが、いくらでも召し上がれますので」

含みのある言...

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