第72章 荒唐

佐久本令朝は冷たく笑った。「自分をそんなに高尚な人間だと思わないことね」

「あなたは分かっていたはずよ。林田尽染が青坂林田の家庭を壊した張本人ではないこと。誰かが林田尽染を利用しただけだということ。妊娠したと偽っていたのは、池田瓊音だということも、全部知っていたはず」

「阿部書竹、あなたもよく分かっているでしょう。言葉は、人を殺せるということを」

「あなたはただ、自分の手段を利用して他人を殺害し、自分の中の異常ともいえる快感を得ていただけ」

阿部書竹はせせら笑うだけだった。「でも林田尽染は男一人のために、何もかも捨てて、堕落の道を選んだ。死んで当然じゃない?」

佐久本令朝は目を細める...

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