第76章 善悪

行き交う人々は皆、足を止め、揶揄うような視線で彼らを見ていた。

佐久本令朝は口角を上げ、その瞳は無垢で澄み切っていた。

長谷川寂は奥歯を舌で舐めた。

加藤紹輝は二人が殴り合いでも始めるのではないかと恐れ、微かに揺れる頭を押さえながら言った。「長谷川寂、青坂林に会わないなら、俺はもうあいつを帰すが」

阿部書竹が渡した証拠の中では、青坂林は補助的な人物ですらなく、完全に阿部書竹に池田瓊音を利用して操られ、すべてを知るに至ったに過ぎない。

逆に彼の父親は、強姦と違法撮影で刑務所行きが決まっている。

そして青坂林の母親は、すべてを知って精神的に崩壊しかけており、今も警察署を離れず、しきりに...

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