第16章 彼女を送り出す

またプールから立ち上がった橋本優子は、鈴木直美を睨みつけ、目に憎しみを宿していた。

三度もプールに落ちて、彼女の罠は失敗に終わり、自分の面子を丸つぶれにしてしまった。

弱みを見せて、鈴木直美に虐められている姿を周りに見せつけ、自分がどれほどつらい思いをしているかを訴えかけるつもりだったのに、まさか鈴木直美が本当に酒を掛けてくるなんて!

「鈴木直美!」傍にいた藤原炎一が我に返り、前に出て鈴木直美の腕を掴んだ。

今日の橋本優子は彼のパートナーとして出席していたのに、鈴木直美がこんな真似をするなんて、自分の顔に泥を塗られたも同然じゃないか!

「どうかしましたか、藤原社長。愛人の肩を持つお...

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