第28章 負けた

深江ゆきは鈴木直美が賭けを受けたのを見て、焦りを隠せなかった。

「直美ちゃん、賭けなんてダメよ!」

藤原炎一とは数回しか会ったことがなかったものの、この数年で噂は耳にしていた。藤原炎一は成功前から、業界でも知られた遊び人だった。

遊びに金を使うのは日常茶飯事で、運も異常なほど強かった。サイコロ勝負なんて遊びでも、負けたことなどないという。

深江ゆきの焦りを察し、鈴木直美は彼女の手を握りしめた。

「大丈夫よ」

この数年、村田蒼たちに振り回されている間に、藤原炎一の過去についても少しは知ることができた。でも、自分だって負けてはいない。

深江ゆきがまだ心配そうにしていると、傍らの秋月...

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