第5章 決定

「隆史お兄ちゃん……」

鈴木直美は掠れた声で何か言いかけたが、結局何も言えなかった。鈴木隆史は溜め息をつきながら、妹の頭を優しく撫でた。

「お腹すいてない?何か作らせようか」

直美が頷いたその時、ベッドから起き上がろうとした彼女に向かって一つの影が飛びついてきた。

「直美ちゃん、やっと帰ってきたのね!」

深江ゆきは鈴木直美を強く抱きしめ、直美は息が詰まりそうになった。

幸い、すぐに手を放してくれた。ゆきは直美の体を上から下まで確認し、腕の注射痕を見つけると激しい怒りを爆発させた。

「あの藤原炎一のバカ野郎!よくもこんなことを!」

ゆきが藤原炎一に詰め寄ろうとしたが、直美に引き...

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