第3章

「おい、なんでずっと俺について来るんだ?」

商店街の男子トイレの前で、神代史人はついに痺れを切らしたように振り返った。金色の髪が陽の光を浴びて、眩しくきらめいている。私は無意識に一歩後ずさり、ポケットのナイフに指を伸ばしたが、視線は彼の腰に巻かれた制服の上着に吸い寄せられていた。

「どうして授業に行かないんですか?」

私はしゃがれた声で、小声で尋ねた。

「お前が俺に聞き返すのかよ?」

神代史人は眉を上げる。

「お前だって授業に行ってないだろ?」

「私は上村先生に休みを届け出ています」

神代史人は口角を上げて笑い、整った歯を見せた。

「俺はお前みたいな可哀想な少女を救いに行くんだよ。授業なんて、世界のヒーローになるのを邪魔するだけだ」

彼は世界中を抱きしめるかのように大げさに両腕を広げ、その姿に私の胸がずきりと痛んだ。

私はふと何かに気づき、心臓が止まりそうになった。

一歩前に出て、彼の制服の袖を掴む。

「あなたの名前はなんですか?」

「知ってるだろ?」

彼の視線が一瞬揺らいだ。

「知りません」

絶望と悲しみが一緒にこみ上げてくるのを感じながら、私は必死に言った。

「あなたの名前を教えてください」

私は彼の袖を強く握りしめる。

「あの日、私にお金をくれました。それを返さないといけないから、あなたの名前を知る必要があります」

神代史人は私を見つめ、その瞳には読み取れない感情がよぎった。それから彼はにっと笑う。その笑顔はさっきよりもずっと明るかった。

「俺の名前は神代史人。覚えたか?」

学校に戻る道すがら、私は彼のことをもっと知ろうとしたが、彼はいつも巧みに話題を逸らした。

「お前はなんでいつも一人で行動してるんだ?」

彼は逆に問いかけてきた。

「友達はいないのか?」

私は答えなかった。

前の人生の私には、確かに友達はいなかった。神代良佑に出会うまでは——いや、神代良佑を神代史人だと勘違いしていただけだ。

「まあ、俺もお前に聞く資格はないか」

彼は独り言のように言った。

「俺も一匹狼でいるのに慣れてるしな」

市立第二高校の門まで来たとき、彼は突然立ち止まり、唐突に言った。

「お前が、あの神代良佑の成績を常に上回ってる優等生の、温井昭子か」

「どうして——」

「待ちなさい! お前たち二人!」

守衛の声が私の言葉を遮った。彼は私たちの方へ歩いてきて、特に金髪の神代史人を睨みつける。

「授業をサボってデートか? ちょうどいいところに戻ってきたな!」

神代史人は意に介さない様子で笑い、踵を返して立ち去ろうとした。

しかし去り際に、彼は私に最後の言葉をかけた。

「強く生きろよ。あのアホの鼻っ柱をへし折るのは、お前にかかってるんだからな」

彼は背を向けて走り去り、私に手を振った。

陽の光が彼の背中を照らす。首の後ろの皮膚がわずかに赤くなっているのに気づいた。それは、照れているようにも見えた。

「君」

守衛が私のそばに来て諭すように言った。

「あんな不良少年には気をつけなさい。悪い道に引きずり込まれないようにな」

私は俯き、ポケットの中に何か増えていることに気づいた。

神代史人のシルバーリングだった。彼は私が気づかないうちに、また指輪を返してきたのだ。

私は指輪を強く握りしめ、口元をわずかに綻ばせた。

わかったわ、史人。

もう一度、やり直しましょう。

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