第1章
どこにでもあるような海辺の町のバーで、一人で座っているような女の子に自分がなるなんて、思ってもみなかった。でも、現に私はここにいた。
カクテルグラスを指で包み込み、私はぼんやりと店内を見渡した。彼に気づいたのは、その時だった。
彼は隅のボックス席に座っていた。神に誓って、本当に心臓が止まるかと思った。部屋の向こうからでも分かるほど強烈な眼差し。完璧な顎のライン。ウイスキーグラスを包む長い指。――なんて、綺麗な人なんだろう。
目が離せなかった。視線を逸らそうとしても、どうしても吸い寄せられてしまう。すると突然、彼が顔を上げた。視線が、絡み合う。顔に熱が上るのを感じた。
やばい、見られてる。
「お嬢さん、おかわりはいかがですか?」
バーテンダーの声に、はっと我に返った。私は考える間もなく頷いていた。
新しいカクテルを半分一気に呷り、どうにかして心臓を落ち着かせようと試みた。私、ここでいったい何をしてるんだろう?一週間前、私は卒業証書を手に卒業式のステージを歩いていた。夜更かしと奨学金申請と、両親を誇らしくさせることに明け暮れた四年間が、ようやく終わったばかりだ。GPAを下げたり、誰かをがっかりさせたりする可能性のあることは、全部我慢してきた四年間。
ルームメイトには、まるで禁欲生活の誓いでも立てたみたいだって、よくからかわれたものだ。彼女の言っていることは、あながち間違いでもなかった。
「早穂はさ、もうちょっと人生を楽しまなきゃ」別れの時の彼女の声が、頭の中で響いた。「この旅行に行きなよ。冒険するの。そしたら誰かに会って、ちゃんと何かを感じられるようになるかもしれないじゃない」
隅にいる彼の方を盗み見ると、彼はまだ私を見ていた。胃がひっくり返りそうになるような、そんな眼差しで。
一度だけ。今回だけなら、突飛なことをしてもいいかもしれない。
「お嬢さん、ちょっとペースが早いですよ」もう一杯頼むとバーテンダーに言われたけれど、ペースを落としたくなんてなかった。お酒の力が必要だった。グラスを持つ手が、震えて止まらなかったから。
深く考える前に、私は立ち上がっていた。足元はおぼつかなかったけれど、一歩、また一歩と無理やり動かして、彼のテーブルの真横に立ち、彼を見下ろしていた。
彼が顔を上げた。一瞬、呼吸の仕方を忘れた。間近で見ると、彼はさらに魅力的で、私の中まですべて見透かしてしまいそうな暗い瞳をしていた。
「座っても?」私は尋ねた。
頭が追いつく前に、私は腰を下ろしていた。「あ……こんにちは」
我ながら、なんて気の利かない挨拶。
けれど彼は、私が馬鹿みたいなことを言ったのではなく、何か魅力的なことを言ったかのように微笑んでくれた。「初めまして、勇気です」
「早穂です」
私たちは流れ始めた音楽について話し、それからこの町について話し、そうしているうちに、いつの間にかあらゆることについて、そして同時に何でもないことについて話していた。彼の声は低く、私に何かを訴えかけてくるようだった。一つ一つの言葉が重要に感じられ、気づかないうちに、私はもっと近くへと身を乗り出していた。
テーブルの下で膝が触れ合うほど近くなったのが、正確にはいつだったのか分からない。彼の手が動き、指先が私のものに触れた。ほんのかすかな接触だったのに、全身でそれを感じた。
アルコールのせいで、すべてがより暖かく、より強烈に感じられた。私たちの間の空間は、今まで経験したことのない何かに満たされているようだった。まっすぐ考えるのが難しいほどの、この引力に。
「どこか、別の場所に行きませんか?」言葉は焦って、息を切らしながら飛び出した。
彼の指が私の指に絡みつき、その感触が腕に熱を走らせた。「今泊まっているホテル、この通りを少し下ったところなんだ」
あのホテルまで歩く道程は、私の人生で最も長く、そして最も短い時間に感じられた。心臓の鼓動があまりに速くて、胸から飛び出してしまうんじゃないかと本気で思った。彼がドアの鍵を開け、押し開けた時、私はほんの一瞬、ためらった。
次の瞬間、彼は私を中に引き入れ、彼の唇が私のものに重なった。思考が、完全に停止した。
キスなんて、されたことがなかった。膝から崩れ落ちそうになるほどの、こんな必死な欲求を伴うキスは初めてだった。彼の手が私の腰を見つけ、ぐっと引き寄せられる。私は思わず、彼の口の中へと喘いでしまった。
「待って」彼は言った。私を見つめるのに十分な距離だけ、体を離して。窓からの薄明かりの中で、彼の瞳が私の瞳を探っていた。「――本当に、いいの?」
震える手で彼の顔に触れ、指先に微かな無精髭を感じた。「ええ、大丈夫」
再び彼がキスしてきた時、それはもっとゆっくりと、深く、慎重だった。彼は私を後ずさりさせ、私の肩が壁に押し付けられるまで下がらせた。彼の全身が私に密着しているのを感じる。体中の神経が一本残らず叫びを上げていた。彼は軽々と私を抱き上げ、数歩先のベッドまで運ぶと、シーツの上に優しく降ろしてくれた。
「大切にするよ」彼は私の首筋に囁き、その唇は肌に熱い軌跡を残した。「約束する」
彼の手は私の脇腹を滑り降り、指が腰を掴んで、私の真上に身を落ち着けた。月明かりが彼の顔を照らし出し、その瞳は私の瞳に釘付けになって、私がまだ準備できていないというサインを見逃すまいとしていた。「大丈夫?」彼は尋ねた。声は柔らかいが、抑制のせいで少し掠れていた。
「うん」私は囁いた。心臓が激しく脈打っている。誰かをこんなに近くまで寄せたことは一度もなかったけれど、彼となら、そうしたかった。私のすべてを見てほしかった。彼の唇が私の唇に、固く、温かく押し付けられ、それから首筋へとキスの軌跡を残していく。彼の手が私の太ももの間に移動し、指が私の敏感な部分を撫でた。全身を電流が駆け抜け、息が詰まる。
彼は自身のものを私の入り口へと導き、その先端が私に押し当てられた。私は緊張し、神経質になりながらも、それを渇望していた。彼がゆっくりと中に入ってくる。引き伸ばされる鋭い痛みが私を貫いた。私は息を呑み、小さな叫び声が漏れ、彼の肩を強く掴んだ。彼は動きを止め、親指で私の頬を撫でた。「大丈夫だよ」彼は言い、私の唇に優しくキスをして、私がリラックスするのを待ってくれた。
痛みは疼いたけれど、彼の指が再び私の敏感な部分を見つけ、ゆっくりと円を描くように擦ると、温もりが体中に広がり、緊張が和らいでいく。私が頷くと、彼はさらに深く動き、彼のものが少しずつ私を満たしていった。痛みはもう和らぎ、感覚は奇妙な、満たされた圧迫感へと変わっていった。彼の口が私の胸へと下り、唇が乳首を覆い、舌で弾きながら優しく吸うと、私は身震いした。
彼は腰を突き始め、最初はゆっくりと、それから少しずつ速く、その手はまだ私の敏感な部分を弄んでいた。体の中で動く彼のものと、私の下にある彼の指の組み合わせが熱を生み出し、頭がくらくらした。私の体は、自分でも持っているとは知らなかった本能に従って動いた。まるで何を欲しているか知っているかのように、私の脚が彼に絡みつき、爪が彼の背中に食い込む。彼の息は私の肌に熱くかかり、彼の低い呻き声が私の柔らかな喘ぎ声と混じり合った。
感覚が私を圧倒するのに、そう時間はかからなかった。彼のものが的確な場所を突き、彼の指は容赦なく私の敏感な部分を刺激し続ける。私は激しくイき、体が震え、彼を締め付けながら大きな喘ぎ声が漏れた。彼は呻き、もう一度突き刺してから、彼もまたイった。彼の体が私の体に寄りかかって硬直する。彼は私の隣に倒れ込み、私を近くに引き寄せた。私の頭は彼の胸に乗り、耳の下で彼の心臓が速く鼓動しているのが聞こえた。
彼の腕が私を包み込み、指が背中を撫でる。私の体は重く、消耗しきっていた。彼の肌の温もりが私を誘い、まぶたがとろとろと閉じていく。彼が私の額にキスをし、「もうおやすみ」と囁いた時、私は半分眠っていた。彼の腕に絡め取られ、動く気力もなく、私は眠りに落ちていった。
彼の電話の着信音で、私は眠りの淵から叩き起こされた。静かな部屋の中で、その音は暴力的に響いた。
「今、何時?どこ行くの?」私はまだほとんど眠ったまま、もごもごと呟いた。
彼が電話に出ると、その声色ががらりと変わった。「承知しました。直ちにそちらへ向かいます。今すぐ出ます」
眠りの靄の中で、彼がベッドから出るのを感じた。服が擦れる音、紙の上をペンが走る音。それから、彼の唇が私の額に押し当てられ、長い間そこに留まっていた。
「緊急事態なんだ。今すぐ行かなきゃならない。電話するから」
ドアがカチリと閉まり、彼は行ってしまった。
私が本当に目を覚ました時、太陽が窓から差し込み、あまりにも眩しかった。ベッドの向こう側に手を伸ばしたが、そこは冷たく、空っぽだった。
ナイトスタンドの上にメモがあった。「緊急事態で出なければならなくなった。この番号に電話してくれ。――勇気」
心臓が跳ねた。彼の番号を残してくれた。
私は震える手で自分の携帯を掴み、ダイヤルした。
