第5章

あの、ありえないほど深い黒い瞳。完璧な顎のライン。四歳年上だけど、相変わらず破壊的なまでにハンサムな人。

うそ。うそ、うそ、うそ、うそ、うそ。

こんなの、ありえない。真彩のお兄さん。彼女の兄が、山田勇気。あの勇気。あの夜の男。私の娘の、父親。

息ができなかった。文字通り、肺に空気を送り込むことができない。頭の中のあらゆる思考が、ただ同じことを何度も何度も叫んでいる。『真彩の兄は勇気。真彩の兄は勇気』

部屋の向こう側で視線が絡み、彼の表情がみるみる変わっていくのがわかった。

真彩は、私が気を失いかけていることにはまったく気づかず、興奮した様子で彼をアパートの中に引き入れて...

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