第6章

初めて山田勇気がいつもの喫茶店に現れたとき、私はそれを偶然だと思った。

愛花と列に並んでいたときのこと。彼女が私の袖を引っ張ってクッキーを買っていいか尋ねる横で、私は電話と財布を両手に抱えて悪戦苦闘していた。そのとき、背後から彼の声が聞こえた。

「ほら、手伝うよ」

顔を上げると、彼がいた。わたわたする私の手から財布を取ってくれる。心臓が跳ね上がり、そんな自分に自己嫌悪を覚えた。

「ありがとう」と、私はかろうじて言った。「ここで何してるの?」

「真彩に頼まれて、オフィスのためにお菓子を買いに来たんだ」そう言って彼は愛花に微笑みかけた。「こんにちは」

愛花は急に恥ずかしくなっ...

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