第七十一章

道すがら、雨脚は次第に強まっていった。

綾瀬茉莉は窓の外を流れる滲んだネオンを見つめながら、無意識のうちにバッグのストラップを指で摩っていた。

「その先の交差点を右へ」

綾瀬茉莉が告げた住所への指示は、雨音にかき消されそうなほど細い声だった。

東雲暁がわずかに顎を引いて合図を送ると、運転手は滑らかにハンドルを切った。車内は静寂に包まれ、規則正しく動くワイパーの音だけが響いている。

「今日の綾瀬嬢は、実に威勢がよかったな」

不意に、東雲暁がゆったりとした口調で切り出した。その眼差しは、終始面白がるような笑みを湛えている。

「目には目を、というだけです」

綾瀬茉莉は淡々と答えた。...

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