第七十四章

自分のことなら何を言われても構わない。だが、母を侮辱することだけは、絶対に許せなかった。

「茉莉、大丈夫?」

小林上月が心配そうに顔を覗き込む。

綾瀬茉莉は深く息を吸い込んだ。

「平気よ。教えてくれてありがとう」

「お礼なんていいわよ。それより茉莉、本当に落ち着いてね」

二、三言葉を交わし、綾瀬茉莉は再び彼女に礼を言って別れた。

看護師たちの会話を聞いて、噂の出所はおおよそ見当がついた。

病院中ですでに広まっている。遅かれ早かれ母の耳にも入るだろう。母は目覚めたばかりだ。これ以上の刺激を与えるわけにはいかない。

綾瀬茉莉はもう一度深呼吸をした。

母には隠し通さなければ。

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