第10章

黒木志乃がマイクの前に進み出た。彼女は白い上着の襟を正し、まっすぐにカメラを見据えた。

「私の名前は黒木志乃。このキャンパスでまかり通ってきた詐欺について、皆さんにお話しするためにここに来ました」

聴衆は完全に静まり返っていた。記者たちでさえ、ペンを走らせるのをやめている。

「三ヶ月もの間、私はある人物が皆さん全員を欺くのを見てきました。彼女が、本当にそれを必要としている学生のための奨学金を奪うのを見てきました。選挙を、人間関係を、そしてメディアを操るのを見てきました」

彼女は芝居がかったように間を置いた。

「綾瀬楓は、彼女が自称するような人物ではありません。彼女は大学に通う...

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