第5章

自分のSNSを開き、投稿を一つアップロードした。青山先生の診断書(許可取得済み)で、診断結果――軽度の足首の捻挫、合併症なし――の部分だけを見せる。キャプションにはこう添えた。

「ご心配おかけしました。専門医の診断結果です。憶測や噂ではなく、事実に基づいた冷静な判断をお願いします。#事実は小説より奇なり #チームの輪」

SNSでの化かし合いなら、こっちも望むところだ。

翌日、私は木村学長に呼び出された。

「綾瀬さん」

私が席に着くと、学長は口を開いた。

「チアリーディング部内での対立について、いくつか懸念すべき報告が上がっています」

「どのような報告でしょうか、学長」

「黒木さんが、あなたが嫌がらせやいじめ行為に関わっていると主張しています。彼女は、あなたが無許可で彼女を盗撮し、彼女の怪我について悪意のある噂を広めていると言っています」

やっぱり、直接大学側に訴え出たか。

「学長、失礼ながら、黒木さんが注目と同情を得るために意図的に怪我を偽っている証拠を提出できます」

「それは、重大な告発ですね」

「はい、その通りです」

私は彼に動画と診断書、そして黒木志乃が風間明に送った思わせぶりなメッセージのスクリーンショットを見せた。

木村学長はすべてを注意深く吟味した。

「これは……複雑ですね」と、学長はついに言った。

「決定を下す前に、さらなる調査が必要です。それまでの間、お二人には距離を置き、プロフェッショナルな態度を保つようお願いします」

「承知いたしました、学長」

しかし、学長室を出ると、隣の部屋――学部長補佐で学内一の噂好きとして有名な長谷川さんのオフィスから、黒木志乃が出てくるのが見えた。

多方面に手を回している。事態は好転する前に、もっと悪化しそうだ。

金曜日の練習の終わり、森田コーチが発表をした。

「皆さん、知っての通り、三週間後に学園祭がある。伝統の学園祭クイーン選挙が来週月曜から始まる。女子学生なら誰でも、署名を五十人分集めれば立候補できる」

黒木志乃の目が輝くのが見えた。

「優勝者は学園祭の試合で戴冠し、一年間、華浜大学を代表して主要な大学イベントすべてに出席することになる」

練習後、黒木志乃に追い詰められた。

「ねえ、楓」と彼女は言った。

「私、学園祭クイーンに立候補しようかと思ってるの。誰か……有力な人が私たちを代表すれば、学校の士気も上がると思うのよね」

「有力な人?」

「相応しい家柄の、相応しいコネを持つ人よ」

彼女の笑みは鋭かった。

「ここにいるべき人間がね」

彼女が話しているのは学園祭のことだけじゃない。家柄、お金、社会的な地位。もし彼女が私のことを知っていたら、なんて言うだろうか。

「実力のある方が勝つといいわね」と私は言った。

「ええ、そうなるわ」と黒木志乃は答えた。

「必ずね」

私がその場を離れると、スマホが震えた。父の秘書から、プライベート用の番号にメッセージが入っていた。

『お嬢様。会長が例の件、ご存知です。会長は、お嬢様がご自身の力で対処されることを望んでおられます』

…お父様が?どうして、大学のこんな些細な揉め事を?

だが、その時気づいた。もし黒木志乃が本気で勝負したいというのなら、本当の勝負の世界がどんなものか、教えてやる時なのかもしれない。

月曜の朝、私は掲示板の前に立ち、学園祭クイーン選挙の公式な告知をじっと見つめていた。公式候補者になるには署名が五十人分必要で、締め切りは今週の金曜日だ。

「立候補するつもり?」

隣に水野咲良が現れた。

「そのつもりはなかったんだけど」と私は言った。それは本心だった。学園祭クイーンなんて、私の眼中にはなかったのだから。

「まあ、考え直した方がいいかもな」

真剣な表情で相沢拓也が近づいてきた。

「これを見ろよ」

彼は自分のスマホを見せてきた。黒木志乃がすでにSNSに投稿していたのだ。背景には豪邸らしきものが写り、デザイナーズドレスを着たプロ品質の写真。キャプションにはこうある。

「華浜大学に優雅さと品格をもたらすことを楽しみにしています。私たちの中には、生まれながらに導く者もいるのです#学園祭クイーン2024#リーダーシップ#伝統」

生まれながらに導く者?自分の本当の苗字すら名乗らないくせに。

「コメントを見て」と水野咲良が言った。

二百件以上のコメントは、すべてが支持と称賛の声だった。

「完璧!」

「生まれながらの女王様!」

「ついに本物の品格を持った人が!」

「どうしてこんなに早く、たくさんの支持を集められたの?」

私は尋ねた。

「金だよ」

相沢拓也は簡潔に言った。

「SNSボットを雇ったんだ。このアカウントを見てみろよ。半分は偽物だ」

なるほど。自分の存在そのものを偽っている人間にとって、数百人のSNSフォロワーなんてどうってことないのだろう。

「それで」と水野咲良が言った。

「あなたはどうするの?」

私はあの写真、自信に満ちた微笑み、ブランドの服を見た。そして昨夜の謎のメッセージを思い出した。

「思うに」

私はゆっくりと言った。

「本物の競争がどんなものか、彼女に見せてやる時が来たみたいね」

それからの数日間、署名集めは熾烈な情報戦の様相を呈していた。黒木志乃には彼女なりの戦略があった。キャンパスで最も人通りの多い場所に立ち、日増しに高価になっていく服を着て、偽りのお嬢様というコスプレを演じていた。

「こんにちは!」

彼女は通り過ぎる学生一人ひとりに声をかけた。

「学園祭クイーンに立候補している黒木志乃です。華浜大学に本物の洗練をもたらすことに、ご賛同いただけませんか?」

彼女のアプローチは功を奏していた。水曜日までに、彼女は八十五人もの署名を集めていた。

一方、私は全く異なるアプローチを取った。

「ねえ」

私は勉強会にいる女の子に話しかけた。

「学園祭クイーンに立候補してるんだけど、ちょっと協力してもらえないかな?」

「もちろん!でも、どうして立候補するの?」

「だって、私たちの学園祭クイーンは、実際に学生を代表する人であるべきだと思うから。自分が持っているものすべてを、自分の力で勝ち取ることがどういうことか、理解している人よ」

厳密に言えば、それは真実だ。私が勝ち取ってきたものの規模は、彼女が想像するものとは違うかもしれないけれど、すべて自分の力で手に入れてきたものだ。

このアプローチもまた効果はあったが、ペースは遅かった。学生たちは私の誠実さを評価してくれたが、黒木志乃の華やかさは否定しがたい魅力を持っていた。

木曜の夜までに、私たち二人は十分な署名を集めた。レースは正式に始まったのだ。

「さて」

日曜の夜、自室でノートパソコンを開きながら水野咲良が言った。

「状況を確認しましょう」

黒木志乃のSNSのフォロワーは、一晩で五千人に増えていた。彼女の投稿は、数分以内に何百もの「いいね」を獲得していた。

「どうしてこんなことが可能なの?」と私は尋ねた。

「ボット、買収したフォロワー、それに有料プロモーションだろうな」と相沢拓也は言った。

「彼女、この選挙に相当な金を使ってるぞ」

すると水野咲良が、黒木志乃の最新の投稿を見せてくれた。図書館で勉強している「自然な」写真で、周りには高価な教科書が並べられている。

「未来のクイーンだって勉強は必要📚すべてにおいて卓越を💫#努力家」

「もっとよく見て」と水野咲良が言った。

私は目を凝らした。教科書が全部間違っている。彼女が開いているのは微積分の本だが、彼女はコミュニケーション学専攻だ。本の一冊は明らかに小道具で、ページが真っ白だった。

「素人ね」と私は呟いた。

「え?」

「何でもない。ただ、戦略を考えていただけ」

彼女はミスを犯している。自信過剰になっている。そこを突く時だ。

私は自分のSNSを開いた。意図的に控えめにしていたが、もう変える時だ。

「実際に勉強している私の写真。周りには本物の教科書。本物の授業のための勉強。時には見栄えより、本物であることの方が雄弁に語る📖#リアルな学生#学園祭クイーン2024」

「高校時代の全国チアリーディング大会からの昔の写真。高価なチームユニフォームが分からないように、しかし技術の高さは伝わるように、慎重に選んだ一枚。チアリーディングはただ可愛く見せるだけじゃない――それは献身、チームワーク、そして自分の居場所を勝ち取ること💪#努力#勝ち取れ」

あなたの買収したフォロワーが、本物のエンゲージメントにどう対抗するか、見ものね、黒木志乃。

二日後、噂が広まり始めた。最初にそれを耳にしたのは、練習前にコーヒーを買っている時だった。

「彼女、選考委員の誰かと寝て、チアリーディング部に入ったって聞いたよ」と、一人の女の子が友達に囁いていた。

「それにあの奨学金?友達が言うには、彼女の書類、怪しかったって」

「それにさ、風間明につきまとってるの見かける?超必死だよね」

黒木志乃、汚い手を使ってきた。こうなることは予想していたから、好都合だ。

私はその女の子たちに近づいた。

「すみません、学園祭選挙の話をしていましたか?」

「あ!」

一人が顔を赤らめた。

「私たちはただ……いくつか噂を聞いただけです」

「どんな噂を?」

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