第055章 友情より恋愛のやつ

ファントム車内、佐藤深は座席に深く身を預け、細めた目で周囲に冷気を漂わせていた。明らかに機嫌が極端に悪い様子だった。

隣に座る村上翔は彼を数回ちらりと見て、少し感慨深げに言った。

「この武内夕子、なかなかやるな」

佐藤深を惹きつけただけでなく、高橋晃まで虜にしているなんて、相当な手練れのようだ。

佐藤深はその言葉を聞いて冷ややかに鼻を鳴らすと、ゆっくりと目を開いた。その黒い瞳は深さを測り知れない。

「あれは彼女が愚かなだけだ。高橋晃が善からぬ考えを持っていると言ったのに、まだ奴と接触しようとする」

「愚かだと何でわかる?もしかしたら彼女は高橋晃のタイプが好きなのかも...

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