第056章 佐藤という姓が気に入らないなら、高橋という姓が好きなのか

名臣マンション。

高橋晃は彼女をマンションの入り口まで送り、冗談めかして尋ねた。

「部屋に招いてくれないか?」

「遠慮しておくわ」武内夕子は断った。

「もう遅いし、高橋さんもお早めにお休みになったら?」

「晃と呼んでくれ」彼は促した。

「晃さん」武内夕子は彼と争わなかった。何と呼ぼうと構わない、どうせどうでもいいことだった。

高橋晃は満足げに頷き、車のドアを開けた。

「帰りなさい、君も早く休むといい」

すぐに、武内夕子は車から降りてマンションに入り、高橋晃の視界から消えた。

高橋晃はすぐには立ち去らず、車に寄りかかってタバコに火をつけ、腕時計を確認して...

ログインして続きを読む