第121章

圭人が階下に降りてくるとは思わず、車内で監視カメラの映像を見ていた周はひどく驚いた。

「宴のアニキ、どうします?」

薄井宴は剣のような眉をきつく寄せた。

ここ数日、藤堂光瑠には会いたくないが圭人のことは心配で、彼女が来ている間はずっと車の中で待機していたのだ。

薄井宴が口を開く前に、二人はマンションの棟から出てきた。

圭人はエントランスの前に立ち、藤堂光瑠を見つめている。どこへ行くのかと尋ねているかのようだ。

藤堂光瑠は、彼を連れて団地の外へ出るような真似はさすがにできない。しかし、敷地内をぐるりと見渡しても、芝生の一角すらない。

古い団地には、芝生などないのだ。...

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