第157章

ちょうど車が停まると、藤堂次郎はドアを押し開けて飛び降りた。

一度来たことがあるため、彼は勝手知ったるという様子で、両手をポケットに突っ込み、短い足をせわしなく動かしてマンションの入り口へと向かっていく。

一秒たりとも薄井宴と車内にいたくなかったのだ。

息が詰まる!

窮屈すぎる!

押さえつけて殴りつけてやりたいのに、それもできないなんて、本当に耐えられない!

薄井宴は車内に座ったまま、窓越しに息子の後ろ姿を呆然と見つめ、心を深く傷つけられていた。

彼の表情管理は完全に崩壊していた。

周が車を降りてドアを開けてやると、少しばかり彼に同情してしまった。

「宴兄貴...

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