第165章

階上では、周が三人の子供たちを薄井宴の書斎へ送り届け、扉を閉めた。そして、外から団地内のボディーガードに電話をかけた。

「藤堂さんは一人で階下にいる。気を利かせて、彼女に怪我をさせないように。それから、衝動的に上がってこないよう見張ってくれ。宴のアニキは今夜、機嫌が悪い。彼女にはあまり会いたくないそうだ」

ボディーガードが不意に「奇妙です」と言った。

「ん? 何が奇妙なんだ?」

「藤堂さんが、誰かとずっと話しているようなんです。でも、彼女の周りには誰もいません」

周は訝しんだ。「周りに誰もいないのに、どうやって話すんだ?」

「空中に向かって話しているんです。ですが、独り言とも...

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