第231章

薄井宴は心の中で愚痴をこぼしながらも、手際よくスーツのジャケットとネクタイを脱ぎ、腕時計を外すと、シャツの袖をまくってキッチンへと入った。

 慣れた手つきでエプロンを結んで手を洗い、藤堂光瑠が切りかけていたジャガイモの千切りを始める。

 彼の包丁さばきは見事なもので、「トントントン」というリズミカルな音が響く。

 藤堂光瑠が現れる前は、彼がよく圭人に料理を作ってやっていたのだ。料理の腕はかなりのものだった。

 リズミカルな包丁の音に、藤堂光瑠の意識が引き寄せられた。

 彼女はキャッシュカードをしまい、キッチンへと顔を向ける。

 正直なところ、エプロン姿でキッチンカウンターの前に立...

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