第86章

こちら、藤堂光瑠が夏川甘の電話を切った途端、加賀景蓮からの着信があった。

加賀景蓮は買い物を終えて病院へ向かおうとしたところ、加賀景城から彼女が退院したと聞いたという。

藤堂光瑠は笑って言った。

「うん、さっき退院したの。だから来なくていいわ。もう大丈夫。ちょっと驚いただけだから、すっかり良くなったわ」

「ええっ、今知ったわよ。それにしても、あの斎藤朝虹って女、本当にふてぶてしいわね! 大胆なだけじゃなくて、反省の色がまったくないじゃない!

デパートの件だって、景城が彼女だからって大目に見てやっただけなのに。別れの手切れ金代わりってことでね。まさかこんなに恩知らずだったなんて...

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