第99章

薄井宴が一本の煙草に火を点けると、風が吹き、その煙に藤堂光瑠はむせ返った。

薄井宴は彼女を見つめ、二秒ほど躊躇った後、自ら煙草の火を揉み消した。

藤堂光瑠は無意識に彼をちらりと見た。

今日の彼の態度は、なんだか優しい!

何かに思い至り、藤堂光瑠は途端に緊張した!

薄井宴が口を開いた。「今日は圭人を助けてくれてありがとう」

「どういたしまして!」

「何が欲しい?」

「何もいりません!」

「……君は圭人の恩人だ。欲しいものがあれば何でも言ってくれていい。俺が叶えてやる」

「とんでもない!あなたが私を相手にしないように、私もあなたを相手になんてしま...

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