第108話感情抑圧の王様

「『昨夜、君の教科書を全部見返しておいたんだ。そうしなきゃ教えられないだろう?』彼はそう言ったの。その時、私は悟ったんです」

室内は今や、完全な静寂に包まれていた。

「私が彼に恋をしたのは、運命だとか宿命だとか、そんな理由からじゃありません。私がどん底にいた時、ただ私の痛みに寄り添うためだけに、夜通し高校の教科書を勉強してくれるような人だったから……だから好きになったんです」

声が震えていたけれど、もう止めることはできなかった。

「彼の忍耐強さが好き。二度と使うこともない化学式を、ただ私のためだけに暗記してくれたところが好き。泣いている私にティッシュを差し出してくれて、怒りをぶつけても...

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