第112章:裏切り者

エドワード視点

「陛下、失礼いたします」

私は報告書の束を抱え、オフィスの扉を押し開けた。

だが、目の前の光景に、私は思わず足を止めた。マホガニーの執務机の向こうに座るカエラン様は、十三の領地を統べる恐るべきライカン王とは似ても似つかない姿だったのだ。彼は机に肘をつき、掌に顎を乗せ、口元には柔らかな笑みを浮かべている。その瞳には、今まで見たこともないような、どこか遠くを見つめる夢見るような色が宿っていた。

彼の右手は机の上で気だるげに円を描き、指先で見えない模様をなぞっている。

私は咳払いをした。「陛下? 北部巡回警備の配置について、ご裁可をいただきたいのですが」

「ん……...

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