第163話僕の彼女は完全ストレート

彼女のコーヒーカップがソーサーに音を立ててぶつかり、中の液体が溢れ出しそうになるほど激しく揺れた。

「エレナ!」

俺の声は、周囲の客が怯えて振り返るほど、凶暴な唸り声となって響いた。

「セーブルを抱きしめようとしただろう。邪な考えは慎めとあれほど言ったはずだぞ」

彼女は俺を見上げ、パチクリと瞬きをした。俺の乱暴な扱いにも全く動じていない。その口元には、癇に障る笑みが浮かんでいる。

「おっと。バレちゃった?」

彼女は俺の手から逃れようともしなかった。

「私のこと、よくわかってるじゃない。さすが従兄弟ね」

抵抗も抗議もしない。襟首を掴まれているというのに、彼女は完全にリラックスして...

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