第167話拒絶されたふたり

「ふざけんなよ。約束の五分間はどうなったんだ?」

「明かりをつける前に、せめて合図くらいしてくれたっていいのに」

舞踏会場のあちこちで、カップルたちが気まずそうに体を離し、バツが悪そうな表情で周囲を見回している。

私はクリスの胸をそっと押し返した。「クリス、私……」

彼はすぐに一歩下がった。その表情には失望よりも理解の色が浮かんでいる。「大丈夫だよ、セーブル。どのみちタイミングが悪すぎた」

「わかってくれてありがとう」

私は心から安堵した。

クリスは大げさにため息をついてみせた。「でも正直言うと、かなりがっかりしてるよ」

「がっかり?」私は不思議そうに小首をかしげた。

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