第193話ソフトとラウンド

俺は勢いよく立ち上がり、通用口へと向かった。外へ出ると、手探りでタバコの箱を探す。

医療センターの中庭は、遠くから聞こえる車の走行音を除けば静まり返っていた。火をつけようとしたその時、彼女の姿が目に入った。

石段に腰を下ろし、一目でそれと分かるふっくらとしたお腹に片手を添えている。太陽に向けて傾けたその顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。

手から滑り落ちたタバコの箱が、地面に音を立てる。

「セーブル?」

彼女が目を開けた。一瞬、きょとんとした表情を見せたが、すぐに誰だか気づいたようだ。「ダレル? ここで何をしてるの?」

俺は屈んでタバコを拾い上げた。「俺は……カミラの検査だ。不妊治...

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