第203章:罪人

セーブル視点

出発ロビーの椅子に座り、私はスマートフォンの画面をスクロールしながら、カエランに関するあらゆるデータを削除していた。

指先が私たちの結婚写真の上で止まる。その時、搭乗案内が流れた。

私はゆっくりと立ち上がり、ゲートへと歩き出した。そして最後の瞬間、削除ボタンを押した。

一枚、また一枚と、彼との痕跡を携帯から消し去っていく。二人の自撮り、ツーショット写真、私が気づかない間に彼が撮っていた自然な表情の写真。

そのすべてが、デジタルの虚無へと消え去った。

最後の写真が消えると、私は携帯の電源を切り、他の乗客たちに続いてボーディングブリッジへと足を踏み入れた。

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