第69話二人の男たちの競争

セーブル視点

カエランが婚約指輪を選ぶために、今日のオークションハウス行きを強く主張したのだ。彼曰く、最高級の品は普通の宝石店などではなく、こうした特別なオークションでしか手に入らないらしい。

目の前にそびえ立つ建物は、まるで富そのものを具現化した記念碑のようだった。午後の日差しを浴びて、大理石の円柱が白く輝いている。入り口に近づくにつれ、彼と私の指が自然と絡み合った。

「悪い、電話に出なくちゃいけない」ポケットで携帯が震えると、彼は申し訳なさそうに私の手を握った。「先に入って見ていてくれ。気に入ったものがあればチェックしておいて」

彼は私の額に優しくキスを落とした。唇の温もりが肌に残...

ログインして続きを読む