第71話アルファの娘

婚約の準備に追われる日々は、まるで旋風のように過ぎ去った。カエランはどんな些細なことでも私のそばにいてくれた。肌に触れる絹の衣擦れの音が心地よいドレスの試着や、目が回りそうなほど議論を重ねたフラワーアレンジメントの選定。選択肢が多すぎて圧倒されそうになる私を、彼の存在がしっかりと支えてくれていた。

あの事件以来、彼は病院にいるブレアを見舞いに行っていない。そのことについて尋ねると、彼の顎に力がこもった。

「馬には何らかの薬物が投与されていたんだ」彼は私の指に自分の指を絡ませながら言った。「誰かが故意に馬を暴走させた。ブレアの件については、俺が適切に対処する」

疑問は残るものの、安堵感が私...

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