第91話絶望的な私

彼女はこくりと頷いたが、その頬には新たな涙が溢れ落ちていた。「セイブル、怖いよ」

「わかってるわ。でも、私のために勇気を出してくれるわよね?」

はぐれ狼の一人が、銀のナイフでデイジーの拘束を断ち切った。彼女の腕が自由になった瞬間、私は彼女を小道の方へと押し出した。

「走って! 今すぐ!」

デイジーは弾かれたように駆け出した。その小さな足で、可能な限りの速さで安全な場所へと向かっていく。

「賢いガキだ」最初のはぐれ狼が言った。「さて、次はお前が代償を払う番だな」

二人の男が私に向かって歩み寄ってくる。確実な死を前にしたその瞬間、私の中で原始的な何かが目覚めた。

私は瞳を閉じた。

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